フランス語紹介
Q&Aフランス語初級カリキュラムの解説
<目標>
フランス語部会では、先述の「目的」を具体化した以下の4項目を、カリキュラムの「目標」として設定しています。
<能力>
①から④の目標に到達するために必要な能力を次のように定めています。
<課題等(文系)>
- 文法クラスは共通のテキストを使い、実用性のみを重視するのではなく、基礎文法を網羅的に学習する。各課の読解問題には格調高い文章が含まれ、読解能力の養成を重視する。
- 演習クラスのテキストは文法クラスのテキストと連動してはいないが、両クラスの担当者間で進度の連絡を行い、学習した文法項目の定着、頻出する口語表現の修得を目的にしている。
- 文法クラスは20%の平常点(出席+小テスト)、80%の共通期末試験で評価。演習クラスは小テストと期末試験の組み合わせによってクラスごとに評価。
<課題等(理系)>
- 文法と演習の両方で複言語主義・複文化主義をテーマとした共通テキストを用いる。
- 実用面を重視し、学習する文法項目は文系クラスに比べて削減している。各課に対照言語学的視点を含んだ文法項目に対するコラムやフランス語の現状をめぐる読み物をつけることで、複言語主義・複文化主義を前面に押し出す構成となっている。演習でも多言語・多文化の比較を題材に選んでいる。
- 文法クラスは20%の平常点(出席+小テスト)、80%の共通期末試験で評価。演習クラスは小テストと期末試験の組み合わせによってクラスごとに評価。
フランス語初級カリキュラム見取り図
文系(前・後期とも)
理系(前・後期とも)
フランス語紹介
フランス語を紹介するにあたり,フランスの経済人類学者のエマニュエル・トッドとのインタビューを紹介したいと思います。トッドは,なぜフランス語を学ぶことに意味があるのか,世界文明の中から考えて,次のように答えます。
Q : なぜ外国語を学ぶのでしょうか。
A : 外国語を学ぶのは,自国語に閉じこもってしまわないようにするためです。一つの言語の中にとどまることは,どのような意味であれ,一つの文化や一つの伝統の中にとどまることに他なりません。ですから,日本の伝統であれ,フランスの伝統であれ,一つの伝統にだけとどまることなく,そこから脱出できるようでなければなりません。もちろん英語を話すイギリス人も,イギリスの伝統にだけとどまらないようにする必要があります。アメリカ人やイギリス人の問題は,世界中の人が英語を理解するので,イギリス人が自国語を話すと,他の人々は英語を理解してしまい,イギリス人は英語だけで満足してしまうことにあります。言い換えると,英語が成功を収めて,世界に普及しているために,彼らは英語の世界に閉じこめられているのです。
Q : なぜフランス語を学ぶのでしょうか。
A : 逆説的なことですが,フランス語は英語とペアで学ぶべきです。フランスとイギリスの文化は,いわば双子の文化であり,ずっと競合してきました。英語だけの視点から世界をみると片手落ちになり,民主主義や自由主義,ヨーロッパの近代化などを一方向からのみ考えることになります。フランス語は英語とならんで,もう一つの伝統であり,英語だけしか知らなければ,二つの大きな伝統の一つしか見ないことになってしまいます。
Q : フランス語を学ぶにあたり,コミュニケーション能力も大切ですが,そのほかにどのような目的があるでしょうか。
A : 二つの課題があると思います。フランス語は,今も重要なコミュニケーション言語の一つです。北アフリカ,すなわちチュニジア,アルジェリア,モロッコや,フランスの植民地支配を受けてきたブラック・アフリカなどではフランス語が話されています。これらの国では就学率が伸びているので,フランス語を話す人口は増えています。フランス語は決して消滅しつつある言語ではないのです。フランスの影響を受けたレバノンのような国でも,英語が伸びているのは事実ですが,フランス語も伸びています。フランス語はコミュニケーション言語として使用されているのです。
またフランス語はもう一つ別の文化へと拓いてくれるものです。英語によってもたらされる画一的で,標準化されたものの見方から解放してくれるものなのです。
Q : なぜ現代世界では,英語以外の言語を学ぶことが大切なのでしょうか。
A : フランス語には特別な理由があると思います。現在,世界の中で,あらゆる民族や,文化,人種の融合しつつある地域はごくわずかしかありません。つまり,世界文明や世界都市というもので,アメリカの都市やロンドンがそれに該当するでしょう。しかし,中でもとりわけパリは世界都市になろうとしています。パリに行き,町中を歩いてみればわかりますが,そこにはさまざまな外観をした人や,さまざまな皮膚の色をした人が,さまざまな国の人が出身を問わずにフランス語を共通語として暮らしています。フランスでは人々の出自をほとんど気にとめません。これはフランス文化の特徴ともいえますし,普遍的人間というフランスの政治観念の表れであります。実際,フランスでは,とりわけパリでは現在何らかの新たな現実が現れつつあるのです。これには困難な点もありますが,パリは独自の世界を形成し,さまざまな人々が一つの同じ言語を媒介として混じり合い,世界都市になろうとしています。フランス語は,これからも人間の統合という点で,英語とは異なる道を開いてくれると思います。
Q&A
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フランス語は発音が難しいと聞きました。
「発音」というとき実際には3つのポイントがあります。1つ目は母音や子音などの音の出し方です。確かにフランス語には日本語にない母音があり,また鼻に抜く鼻母音という独特な音もあります。しかしどれも少し練習すれば出せるようになりますので心配はいりません。2つ目は綴り字の読み方です。英語のaはappleでは「ア」,ableでは「エイ」,orangeでは「イ」など全部で7通りの読み方があります。しかしフランス語ではaは常に「ア」としか読みません。綴り字の読み方は英語より規則的です。3つ目のポイントはリズムとアクセントです。強弱と緩急のある英語のリズムとアクセントは日本語話者にはたいへん修得が難しいものですが,フランス語は日本語と同じ平板なリズムとアクセントですから,馴染みやすいと言えるでしょう。
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フランス語って英語と文法がぜんぜんちがうんですか。
フランス語と英語はとてもよく似た言語です。Peter has an apartment near the park. はフランス語だとPierre a (持っている) un (冠詞) appartement (アパート) pres du (近くに) parc (公園). となり,単語を並べる順番も同じです。また英 face / 仏 face,英 flower /仏 fleur,英 government / 仏 gouvernementなど,フランス語から英語に流入した単語がたくさんあります。英語の文法はフランス語の習得にとても役立ちます。
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フランス語は動詞の活用形が複雑だと聞きました。
英語は歴史的変化の過程で活用形をほとんど失ってしまった珍しい言語なんですよ。英語以外のヨーロッパの言語はどれもフランス語と同じくらいか,あるいはそれ以上に複雑な活用形を保持しています。ですから英語と比べるのがそもそもまちがいですね。中国語には動詞の活用形がありません。しかしヨーロッパの言語で動詞の活用形が担っている意味を他の要素が表しているので,習得に必要な努力の総量は同じでしょう。
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どんな勉強にフランス語は役立つのですか。
伝統的にフランスが得意としている分野は,理科系では数学,分子生物学,植物学,生理学,航空工学,原子核工学,宇宙開発,建築などです。意外かも知れませんがフランスはロシアと並んで数学王国なんですよ。建築もル・コルビュジェなんか有名ですね。ですから建築学科の学生はフランス語を選ぶ人が多いです。文科系では,国際法学,文化人類学,心理学,精神分析,哲学,社会学などの勉強にフランス語は役立ちます。
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フランスってファッションと料理だけじゃないんですね。
もちろんパリコレに代表されるファッションと,ミシュランガイドで名高い料理大国としても知られていますね。そういった興味からフランス語を学ぶのもいいでしょう。
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週2回のクラス別授業と、週4回の8時間コースで迷っているのですが。
でしたら最初は両方に出てみたらどうですか。授業のやり方とかクラスの雰囲気を見て,4月中旬の履修登録までにどちらにするかを決めればいいのです。特に文科系学部の学生は最初の2年間は比較的時間がありますので,8時間コースでみっちりフランス語を学ぶことをお勧めします。いろいろな学部の学生がいてクラスの雰囲気もいいですよ。