スペイン語紹介
Q&Aスペイン語初級カリキュラムの解説
<目標>
スペイン語部会では、先述の「目的」を具体化した以下の4項目を、カリキュラムの「目標」として設定しています。
<能力>
①から④の目標に到達するために必要な能力を次のように定めています。
<課題等>
A.からD.に対応する課題を以下のように定めています。
【各課題の説明】
a. ユニットテーマに関する日本語エッセイ(前期・8回)
10のユニットテーマのうちから8つを選び、具体的な指示に準拠しつつ、600字程度のエッセイを作成してもらいます。異文化理解を深める前提として、自己について文化的・社会的観点から省察し、自己を相対化してもらう目的で実施しています。
b. ユニットテーマに関する日本語レポート(後期・4回)
10のユニットテーマのうちから4つを選び、具体的な指示に準拠しつつ、2000字程度のレポートを作成してもらいます。異文化理解に関わる内容を、学術的な方法で記述する訓練として実施しています。課題に取り組んでもらう準備として、後期文法初回授業には、吉田南図書館学術情報掛によるレポート作成講習会を組み込んでいます(主な内容:エッセイとレポートの違い、文献引用の方法、CiNii Articlesの利用方法)。
c. 学習振り返りアンケート(前後期・各2回)
設問を通じ、自己の異文化理解やスペイン語学習を客観的に振り返ってもらい、今後の学習について考えてもらう目的で実施しています。
d. スペイン語作文課題(前期3回・後期2回)
スペイン語で「書く」能力を伸ばす目的で実施します。内容は「e. スペイン語ビデオ作成課題」と連携しており、作文課題で学んだ内容をビデオ作成課題で活かせるようになっています。前期ではもっぱら文法事項と対応した内容ですが、後期ではユニットテーマにも対応した内容となっています。
e. スペイン語ビデオ作成課題(前後期・各3回)
スペイン語で「聞く」「話す」能力を伸ばす目的で実施しています。指定された条件に従って会話文を作成し、ペアあるいはグループで実際にその会話を行い、その様子をスマートフォン等でビデオ撮影し、そのファイルを提出してもらいます。
f. 文法期末試験(前後期・各1回)
言語運用能力には、ツールを有効に利用する能力も含まれるという考え方に基づいたオンライン試験です。辞書(電子辞書含む)利用可、ノートやメモなども電子ファイル化したものであれば参照可能といった条件で実施しています。主として、文法知識と、実際に用いられているスペイン語文章の読解能力を問う内容から構成されます。後期試験では、スペイン語文章の内容はユニットテーマと対応しており、聴解問題も含まれます。前後期ともに問題例がサイト上で提供されており、コース終盤の復習段階において、これを利用しながら「読む」能力について集中的に訓練できるようになっています。
g. 演習期末試験(前後期・各1回)
前期については、1対1の対面方式で、スペイン語による質問3つから4つにスペイン語で回答する、という初歩的な口頭コミュニケーション能力を試すものです。後期については、10のユニットテーマのうち1つを選び、これについての自分の意見をスペイン語で発表するというミニスピーチ形式です。b. のレポート課題で調べ考えたことなどをスペイン語で表現することにより、1年間のスペイン語学習成果の統合を図ります。
【成績評価の構成要素】
コース | 課題 |
---|---|
IA(文法) | a. ユニットテーマに関する日本語エッセイ |
c. 学習振り返りアンケート | |
d. スペイン語作文課題 | |
f. 文法期末試験 | |
IA(演習) | e. スペイン語ビデオ作成課題 |
g. 演習期末試験 | |
IB(文法) | b. ユニットテーマに関する日本語レポート |
c. 学習振り返りアンケート | |
d. スペイン語作文課題 | |
f. 文法期末試験 | |
IB(演習) | e. スペイン語ビデオ作成課題 |
g. 演習期末試験 |
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IA(文法)
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課題a. ユニットテーマに関する日本語エッセイc. 学習振り返りアンケートd. スペイン語作文課題f. 文法期末試験
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IA(演習)
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課題e. スペイン語ビデオ作成課題g. 演習期末試験
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IB(文法)
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課題b. ユニットテーマに関する日本語レポートc. 学習振り返りアンケートd. スペイン語作文課題f. 文法期末試験
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IB(演習)
-
課題e. スペイン語ビデオ作成課題g. 演習期末試験
-
※学習振り返りアンケートの回答は成績評価の前提条件です。
【ユニットテーマ】
前期後期各10のユニットテーマは次のように配置されています。大学水準の外国語学習で不可欠となる概念やスペイン語学習の前提となる知識が最初に置かれ、次に日常的なテーマへ進み、最終的に大きな社会的テーマへと至る構成となっています。
課 | 前期 | 後期 |
---|---|---|
1 | 書記システム(1) | 教育制度 |
2 | 書記システム(2) | 宗教 |
3 | スペイン語圏の地理 | 外国語学習 |
4 | スペイン語の多様性 | 若者の就職 |
5 | 食事・美食 | 開発と環境 |
6 | 音楽 | 都市景観 |
7 | 先住民 | 植民地主義 |
8 | 人口 | 移民 |
9 | 家族 | 多言語主義・複言語主義 |
10 | 家庭でのしつけ | グローバリゼーション |
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課:1
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前期後期書記システム(1)教育制度
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課:2
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前期後期書記システム(2)宗教
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課:3
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前期後期スペイン語圏の地理外国語学習
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課:4
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前期後期スペイン語の多様性若者の就職
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課:5
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前期後期食事・美食開発と環境
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課:6
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前期後期音楽都市景観
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課:7
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前期後期先住民植民地主義
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課:8
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前期後期人口移民
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課:9
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前期後期家族多言語主義・複言語主義
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課:10
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前期後期家庭でのしつけグローバリゼーション
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スペイン語初級カリキュラム見取り図
スペイン語 -これからの言語-
スペイン語コースやスペイン語についての様々な情報を集めた,独自のポータルサイトはこちらです。新入生向けのコース情報も掲載していますので,必ず内容を確認し,納得した上で履修してください。
https://esp-kyoto-u.com/
英語に加えてもう一つ学ぶ言語を選ぼうとしているみなさんにとって,スペイン語がどのような意味を持ちうるのか,少し考えてみましょう。
皆さんの多くは,大学を卒業してから40年ほど働くことになるはずです。40年の間には,今はまだ存在しない技術や価値観に基づく,あたらしい生活や社会が出現することでしょう。現時点では全く予想ができないような世界の変化に対応していくため,またそうした変化を自ら作り出していくために必要な「基礎体力」を,みなさんはこれから4年間かけて京都大学で培っていくことになります。
では,その「基礎体力」の中には何が含まれるでしょうか。企業の観点からは「コミュニケーション能力」「主体性」「チャレンジ精神」「協調性」「誠実性」「責任感」「柔軟性」といった点が挙げられているようです[「新卒採用(2012年4月入社対象)に関するアンケート調査結果の概要,日本経済団体連合会,2012年7月30日]。同調査では,「語学力」もある程度求められていることがわかります。市場経済のグローバル化が進展するにつれて,ビジネスにおいては英語使用がスタンダードとなってきた経緯をみれば,ここで言う「語学力」とは,ほとんど「英語力」と同義とみなしてもよいでしょう。また,アカデミックな世界においても,多くの場合,英語能力は必須となっています。こうした現状を見て,みなさんが英語の学習に力を入れるのは当然のことです。
しかし,ちょっと考えてみましょう。皆さんが卒業して就職し定年退職するまでのおよそ40年間,英語だけ知っていればやっていけるような状況が変わらずに続くでしょうか。重要なものが重要ではなくなり,軽視されていたものが驚くほど重要な位置を占める,といった激しい浮き沈みが驚くような速さで生じているのが現代社会であり,この傾向はこの先より強まると見込まれます。たとえば,インターネットはすでに多くの国家や地域で社会的インフラとして機能しており,生活のあらゆる場面で利用されるようになってきています。LINEやX,Instagramのようなサービスを利用することは日常となり,人間関係のあり方にも影響を与えています。しかし,日本でインターネットが一般化し始めてからまだ40年も経っていないのです。
以上のように考えれば,「これからの言語」であるスペイン語を,人生における「基礎体力」づくりの時期である大学時代に学んでおくというのは,悪くない選択かもしれません。しかし,重要なことは,みなさんが頭をちゃんと使って考えて選択することです。ここで述べていることは考え方の一つに過ぎません。何語を学ぶかということは,突き詰めれば個人の価値観によって決まります。ですので,今後,スペイン語話者やスペイン語使用の大幅な増加が予想されているからといって,スペイン語を学ぶことがあなた個人にとって最良の選択になるとは限らないのです。
ぜひ,他の言語の情報も調べ,比較しつつ,よく考えてみてください。なぜその言語を学ぶのかを自分の頭でしっかり考えることは,言語学習のとても大切な第一歩なのですから。