第2回 初修外国語担当教員による座談会


先ほど、文法は簡単だということを言われましたが、韓国語、朝鮮語の特色はどうでしょうか。

アカデミズムの世界では朝鮮語と言ってます。言語的な特徴は、文法が日本語とほぼ同じです。満州語、モンゴル語、ウイグル語の系統ですから、その系統の中に日本語も含まれている。ただ、語彙は似たものが少ない。漢字でつくられた漢字語はほぼ同じだが、日本で「やまとことば」といっている固有語は共通したものは極端に少ない。日本語と韓国語はどういう関係なのか、まだ言語学的に解明されていないことが多い。普通文法が似ていれば、ヨーロッパ系統の言葉だと語彙も似たようなものが多いが、朝鮮語と日本語の関係はそうではない。そこが不思議だと思います。あとは、文字がアルファベットではなく、漢字でもない、特殊な文字ですので、その習得がちょっと大変だと考えてしまう人も中にはいます。
最近の高校生はよく知っているのかもしれないけど、ハングルがどんな経緯でできたのかなど簡単にお話いただけますか。
ハングルは、漢字の一音節を一つの文字で表したいという欲求から出て来ているもので、発音記号のようなものです。一文字が一音節なんです。母音と子音に分解して、母音の字母と子音の字母を一音節として組み合わせる。設計思想は儒教です。陰陽五行ですね。子音の字母は五行。木火土金水という五つで表される。母音は陰陽です。
母音は何種類あるんですか?
現在使われているのは21種類です。母音が21で子音が19です。
確かに発音が日本語母語話者にとってはやっかいです。
陰陽というのは21が二つに分かれるんですか?
陰・陽・中性というのがあって、すべての母音が陰母音、陽母音、中性母音の3つにわかれています。
それは発音も違うし、ハングルで書くときも違うんですか。
違います。
母音が21あるけど、3×7ということですね。
そういうことではありませんが、日本語では同じ母音として分類するものを、陰と陽に区別するということはあります。たとえば同じ「お」という母音でも、陽母音の「お」と陰母音の「お」は全然違う音です。 中国語の四声とは関係ありません。日本語にも実は陰母音と陽母音と同じような区別があって、母音調和しているんですけど、
母音調和とは?
例えば、現在も擬音語・擬態語にありますが、キラキラとか、クルクルとか、要するに子音のところは同じで母音のところだけ違うものが一定の調和をするというのが、日本語と朝鮮語とはよく似ています。日本語も古代にさかのぼるともっと母音調和が明瞭だったと思います。
古代のものが変わってくるときに、日本では同じようになったのが、朝鮮語では違いが保たれたのはどうしてなんでしょうか。
朝鮮語を表記するための文字である訓民正音(ハングル)が作られたのが1443年で、かなり遅いです。なぜ15世紀になるまで固有の文字を持てなかったかというと、音韻体系があまりにも複雑だったからです。日本語の場合は50個ぐらい文字があれば表記できるんですが、ハングルの場合は21の母音と19の子音で、これを組み合わせて子音で終わる音節もありますので、現在日常的に使われている文字の数が2,000以上、組み合わせでいうと、5,000も6,000にもなります。
2,000以上の文字を用意しないと全部を表記できない。
表意文字じゃなくて表音文字なんだけども、それだけの数が必要なんですね。それをわかって、つくられたということですね。
2000いくつの文字を全部違う形で作ることはできないから、母音と子音に分けて、一つの音節を一つの文字で作るためにどうすればいいかを設計した。
なるほど、文法的なことよりもそっちの方が朝鮮語にとっては重要で、それがハングルができたということなんですね。
文法が簡単だと言ったのは、日本語と一緒だからです。
新入生が勉強するときの注意点は?
ほかの言語と違う点は、文字の習得ですね。最初の5週間ぐらいで文字を読めるようにします。最初は記号、模様にしか見えない。○や□や棒と音が瞬時に一致しないといけない。
それは授業でやるんですか?
宿題もありますが、基本的に授業でやります。
最初の学期の3分の1ぐらいですね。
そこを過ぎると一気に楽になります。京大の学生の場合はつまずくことはありません。
理系的に考えると、組み合わせの話で理論がはっきりしているからわかりやすい。
理系の学生が多いですよ、かなりおもしろがっている。
その先はどのような授業展開ですか。